習慣流産の治療

低用量アスピリン療法

アスピリンを一日あたり80〜100mg服用することで, 血液の凝固を抑制します. これにより胎盤での血栓の形成をくいとめ, 胎盤と胎児を守ります. 凝固機能異常・自己免疫異常など広範囲に使用されています. 服用は妊娠初期から妊娠後期まで. 妊娠前から服用するという考えもあります.

漢方療法 (柴苓湯・当帰芍薬散)

さまざまな目的でさまざまな漢方薬が使用されています. 効果の有無についても結果はさまざまです. 効果があるという報告・効果がないという報告が入り混じっています. 当院では自己免疫異常の改善を目的に柴苓湯や当帰芍薬散を妊娠前に服用してもらっています. 自己免疫異常・抗リン脂質抗体症候群の女性が対象となります.

プレドニゾロン

副腎皮質ステロイドホルモンを内服することで自己免疫異常をやわらげ, 流産を防ぎます. 自己免疫疾患に対する治療を参考とし40mg程度を投与するという考えが主流でしたが, これだけの大量投与だと血栓症・肝機能異常等の副作用が出現するため, 現在では10mg程度の低量投与が行われ, 効果をあげています. 自己免疫異常・抗リン脂質抗体症候群の女性が対象となります.

ヘパリン

目的は低用量アスピリンと同じです. アスピリンよりも強力に血液の凝固を抑制し, 血栓の形成を阻害します. しかし, 投与方法が皮下注射となるため常に皮下に注射針を刺し続けなければなりません. 凝固機能異常・自己免疫異常の患者さんに対し使用され, 効果は強力で血栓形成による流産・死産を防ぎます. しかし, 患者さんへの負担は大きく, 出血などの副作用も無視できない程度発生するため, 低用量アスピリンなどが十分に効果を発揮しなかった症例にのみ適応としています.

血漿交換療法

抗リン脂質抗体などの胎児に悪い影響を及ぼす自己抗体を直接除去してしまおうという治療法です. まだまだ実験的というべき治療法で確実に効果があると認められた治療法ではありません. 

免疫グロブリン大量投与療法

抗リン脂質抗体などの胎児に影響を及ぼす自己抗体を, 他の抗体(免疫グロブリン)を大量に加えることで相対的に薄めて取り除いてしまおうという治療法です. 血漿交換療法と同様に, 広く認められた治療法ではありません.

手術療法 (子宮鏡・腹腔鏡下手術)

子宮奇形・子宮筋腫・子宮内腔の癒着などの疾患が対象となり, 子宮内腔に影響を与え流産を引き起こしている病変を切除します. また, 頚管無力症に対しては頚管縫縮術が妊娠後に行われます.

免疫療法 (夫リンパ球輸血療法)

スクリーニング検査で異常が発見されず, 他に治療方法がない習慣流産の患者さんに対して行われる治療法です. 3回以上流産を繰り返した患者さんが原則的に適応となります.

妊娠中は免疫能が抑制された状態=免疫寛容状態になります. 習慣流産の患者さんはこの機構がうまく働いていないのではないかという考えがあります 流産を異物(夫の遺伝子の産物, つまりタンパク質)に対する免疫的な拒絶反応ととらえるのです. 夫の遺伝子産物(タンパク質)に対する拒絶反応を抑えるため夫のリンパ球を数回にわたり皮下に注射します. 最初は夫のリンパ球=夫の遺伝子産物(タンパク質)に対する拒絶反応が生じますが次第に反応が弱くなり, 妊娠状態と同じ免疫寛容状態となります.

これが免疫療法がなぜ効くのかということに関する仮説ですが, これが正しいかどうかはまだわかりません. また, 夫とはいえ他人の血液を体の中に入れるわけですからあまり気持ちのいいものではないかもしれません. 効果に関してですが, 効果があるという意見・認められないという意見, それぞれ報告があるといった状態です.

しかし, 原因不明の流産患者さんに対し, 免疫療法以外の治療法が存在しないため, 当院では希望のある原因不明の習慣流産患者さんに対し免疫療法を行っています.

なお, 免疫療法は免疫機構を動かして効果を上げると考えられているため, 自己免疫疾患・自己免疫異常・抗リン脂質抗体症候群など免疫学的な異常・自己免疫異常のある患者さんには禁忌とされています.

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